2017年11月25日 [心療内科・精神科]
ニートの稼働能力
平成18年5月22日の新聞記事に、自民党税制調査会が扶養控除に年齢制限を設けニートの自立を促すという内容の記事がありました。増税が目的でなく、本当にそう考えているとしてもニート個人個人が本当に働いていないのか、働く意欲・意志がないのか、それとも働けないのかを判定しないとますます親の負担を高めるだけです。能力的に働けない人にとっては踏んだり蹴ったりの政策になります。
日々、診療の中で人の稼動能力を判定しているのですが現実には甚だ困難な作業となります。考えてみるとわかると思いますが、人がその仕事で必要とされる能力を細かく記述すると百科事典の分量でも足らないくらいです。仕事に必要な知識、対人関係能力、体力、意欲、礼儀・作法、常識等とてつもない判定となります。うつ病で治療中という判定材料が豊富にある場合でもやってみないとわからないというレベルです。
民間企業に勤務する方が無理して働いている場合や、逆に休む必要性に乏しくても病気休暇(有給休暇とは別物です)を取得して遠慮なく休んでいる人がいるのも現実です。ましてや治療のレールにさえ乗っていない人の働く能力をどこで判定するのでしょうか。近年、民間・行政機関等でニートや障害者の自立促進を強調していますが、その中にはどうやっても就労困難な人がいることを念頭に置く必要があります。増税目的ならば最初からそう言って欲しいですね。