在宅介護推進で良いのか?
厚生労働省が作り出している医療・福祉の分野での大きな流れとして、在宅介護推進があげられます。しかし、最初から在宅介護推進ありきという姿勢で本当に良いのか疑問を持っています。施設入所、病院入院を意図的に減らすために無理に在宅介護を推進しているという印象を持ってしまいます。荒尾保養院など精神科病院の新規入院患者さんの内訳は、若い人の統合失調症など精神病の方よりも、お年寄りの認知症(痴呆症)方が多数を占めています。家族が困り果てて入院されているようです。無理して在宅介護を続けると、家族とりわけ嫁や娘に大きな負担がかかります。ある親子の例ですが、70代後半の娘が100歳近い母親の介護を自宅でしていたら、すぐに限界に達し、親を虐待するようになりました。高齢者による高齢者への虐待です。その母親は別の理由で亡くなりましたが、痴呆を発病してから約5年間はその娘だけでなく周辺の人々にも多大な影響を与えました。ここまでくると実の親子でも激しく憎みあうようになり、お互いにとって悪い結果となります。本来なら私にも通報義務があったのですが、あまりにも身近な存在だったためしませんでした。
在宅介護推進が、本当は介護保険の支出を抑制するためというのが納得いかないところです。医療費抑制のため介護保険が登場し、今度は介護保険が増えるとそれを減らすために在宅介護を推進する。その方法として要介護度が低く出るようにコンピューターソフトを変更する、入所者の負担金を高くするなどです。介護認定のソフトなんか科学的な印象を与えているかもしれませんが、役所の思い通りの結果が出るように操作するなんて簡単なことです。ボケ防止、寝たきり防止、成人病予防などの予算を増やしているようですが費用対効果がそれ程優れているとは思えません。それでも効果が十分出るという楽観的予測をしても医療費や介護保険の支出が減るわけではありません。人間一度は死にますので最終的に病気になって寝たきりになります。予防対策はその年齢をもっと高齢にシフトするだけであり、むしろ増加要因となります。医療費や介護保険支出削減のための行政による施策は失敗します。それがハッキリするまで、あるいはそれ以降も日本全国で嫁や娘が苦しむことになります。ポックリ死ぬ人を激増させることが可能であれば別ですが。
今年四月より実施された自立支援法によって、その建前とは逆に利用者にとってはますます利用しにくい制度となり、その他にも医療・福祉の分野で予算の中から直接国民に渡る金額がどんどん減っているような気がします。反面、公務員の方の人件費や利権はむしろ増えているというマスコミ報道が目立ちます。民主党の小沢党首がテレビで言っていましたが(私は民主党員ではありません)、国・地方の公務員の人件費は40兆円、行政経費が150兆円であり10兆円20兆円は簡単に削減できるとのことです、ならばそこに財源を求めるべきです。自宅で生活できないお年寄りの方は、無理しないで3食・昼寝・レクレーション付きの施設で生活し、子供は頻回に面会するというパターンが今の時代に合っていると思いますが。