幻覚妄想状態
幻聴・幻視・幻味などの幻覚、被害妄想、誇大妄想、貧困妄想などの妄想の症状が統合失調症(精神分裂病)、痴呆、うつ病、アルコール依存症、薬物中毒など様々な精神疾患で精神症状として出現します。そうした幻覚妄想状態に支配された状態は一般の方はほとんど遭遇することはないと思います。今回はそれに対して説明したいと思います。
本当に幻覚妄想状態に支配される(本人の状況判断能力のない状態を意味します)とはどういう状態か、最近の例で担当医として経験したことを説明します。その方は会ってみると全裸で、話しかけても応答がありません。意識はあり開眼しているのですがどこを見ているか分かりません、食事も水分の摂取も自発的にはできません。ほとんど動けない状態です、つまりパソコンでいうとフリーズした状態です。逆に突然攻撃性をあらわにして殴りかかったり、一晩中ドアをたたき続け自分の手を外傷したりします。幻覚妄想状態が続けば生存できず、死んでしまうことになります。日頃は決してそういう方ではないので症状が急性増悪したことはすぐに分かります。しかし、そういう状態は本来の人格の問題ではないので現代精神医学のレベルでも十分治療できます。
毎日のように凶悪犯罪、子供に対する犯罪の報道が続きます。犯人の弁護側から責任能力がないとの主張が繰り返されますが、その根拠が幻覚妄想状態による行為です。有名な事件で日本を代表する精神科医による精神鑑定で意見が真っ二つに分かれる(精神医学が学問であるが科学的でない、例えば法律学や経済学のような存在を意味すると思いますが)ことも珍しくありません。精神科病院に勤務する精神科医でないとなかなか幻覚妄想状態に支配された人を見ることはないと思います。犯罪を犯した前後にコンビニに行ったり、テレビやビデオを見たり、ゲームやインターネットをしたりと普通の生活をしていた人格障害のレベルの犯罪者が、自分の罪を免れるもしくは減免されることに幻覚妄想状態という言葉を利用することのないように注意したいものです。