希みが丘クリニック
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躁うつ病ブーム?
2017年11月26日 [心療内科・精神科]

 最近、どうも精神科医の中で双極性障害(躁うつ病)が流行しているようです。10月2日の朝日新聞の新書の広告によると、我が国のうつ病患者300〜600万人のうち実は半分が躁うつ病だとのことでした。以前ならば躁うつ病と診断することは精神科医としても慎重であるべきと考えるのが一般的でした。なぜならばそのように診断された患者さんは統合失調症の方と同程度重症であり、普通の生活は困難と判断していたからです。私も荒尾保養院(今は荒尾こころの郷病院となっています)に勤務している時は、躁うつ病の患者さんが入院するとなると相当緊張しました。統合失調症の患者さんよりもむしろある意味対応が難しいからです。

 

うつ病ほど発病年齢、重症度、発病原因、症状の内容、社会適応力等が大きく異なる精神疾患はなく、それ程拡大解釈されていると思います。医者としても患者さんにはうつ病と説明しておきながら、実は本当の病名として人格障害、発達障害、統合失調症、認知症等を念頭においているケースも少なくないかと思います。もちろん病名が一種類だけでなく複数の病名が付けられることも一般的ですが。

 

精神疾患は、「すべてその境界線があいまいで確定診断することが困難である。」という主張は当ブログにおいてもずっと言い続けていることですが、うつ病と躁うつ病の厳密な区別はできません。うつ病の患者さんはその症状が変動するのは当たり前で、調子が良い時は少し張り切り過ぎてしまうということは臨床医としては常識です。当院ではその変動幅が極端な場合のみ(こういう部分が曖昧さを含むことになりますが)躁うつ病と診断しています。インフルエンザのように遺伝子検査で明確にA型、B型、新型などと区別できないのです。精神疾患はすべて遺伝的な原因が背景にあるにもかかわらず、現時点ではほとんど発病原因遺伝子が解明されていません。

 

躁うつ病に対する治療薬もリーマス、テグレトール、デパケン等あります、効果的なこともありますが、あまり効果なくうつ状態が続くという場合も少なくありません。躁うつ病が生物学的に急増したり、感染症のように大流行するするわけではありません。医者の診断基準が主観的に変化したに過ぎないのです。躁うつ病のブームに乗った医者は患者さんが過去、上機嫌であったり、張り切っていたり、楽観的であったり、自信満々であった時期の有無を問診で聞いてきます。もし、該当すれば躁うつ病と診断します。


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