最近のテレビ報道で、うつ病休職中の患者さんを対象とした、ある精神科病院でのデイケアでロールプレイを導入し、復職率を向上させたという報道を見ました。それでも復職率は80パーセント程度との事でそれ程高くないという印象を持ちました。デイケアの部屋を会社のオフィスのようにして患者さんもネクタイ着用し、会社でのやり取りを練習していました。
このロールプレイが、行動療法、行動心理学に基づくものかは良くわかりませんが、バーチャルリアリティー(仮想現実)を想起させるものであり、ちょっと馬鹿馬鹿しさを感じてしまいました。人間の感覚は敏感であり下手なCGはすぐに見破られてしまうのと同じ理屈です。しかし、CGも進歩して北京オリンピックの開会式では最後まで気づかなかった人も多かったと思いますが。
ロールプレイの理論的根拠は全く知らないのですが、実は僕自身その経験は豊富です。個人的な話となりますが、25年以上前に日本IBMに入社しました、外資系の先端企業でしたので一年四ヶ月程新入社員研修のカリキュラムでロールプレイを徹底的にやりました。デイケアでやっているようなレベルとは異なり、実際の仕事よりも厳しく、真剣そのもので深夜まで準備に追われ、大変でした。自己弁護になりますが、わざとらしいやり取りが嫌なもので(日本人とは文化的背景が異なるのが理由と思っていましたが。)結局新入社員研修の卒業試験の前にリタイアしてしまいました。それで結局会社人間としては通用せず、医学部に再入学して今日に至っています。
そうした背景がありますので、ロールプレイと聞くと今でも良い印象を持っていません、どうしても茶番的なイメージを持ってしまうのです。
うつ病患者さんにとって一番有効な方法は、デイケアでのロールプレイではなく、OJT(on the job training)です。効果的ですし、患者さん・企業にとっても時間とコストの節約になります。実際は新入社員の研修とは異なりますから、再OJT(RE-OJT)となりますが、それを人事制度上認める必要があると思います。有効なリハビリ方法と思ってください。