当院でもそうですが、うつ病の方が初診時配偶者同伴で受診される場合が多いです。初診だけでなく再診の時も一緒に来院し、家族の方にも診断名、病状や治療法、治療見通し等を説明しています。しばらく経過するとうつ症状も安定し、患者さんも一人で受診することが多くなります。それは当然の流れで、こちらも不思議に思わずそのままにしています。それでも時々家族の方についてたずねると「実は・・・」と患者さんが少し深刻そうに話します。現在夫婦仲が悪化し別居中であるとか、離婚を要求されているとか、離婚しました等の返事が返ってくることがあります。こちらとしては家族の方も何回も受診し知っているわけで、残念な気持ちになります。
うつ病の方の家族に対する言動の変化として、神経過敏になって家族の方が善意で言ったことも逆に「どうせ自分は役に立たない人間だ。」などと被害的になったりすることや、退行して子供のようなワガママな言動をしたり、配偶者の後を赤ちゃんのようにつきまとったり逆に「一人にしてくれ。」などと家族、特に配偶者を振り回すことになることも説明しています。しかし、うつ状態がなかなか改善しなかったりすると、家族の方の不安・焦燥感も極度に高まり、次第に限界を超えて結局夫婦関係も破綻することも珍しくありません。破綻しないでも配偶者も軽いうつ病になったり、ノイローゼ状態になったりすることはよくあります。
夫婦仲が悪くなると、患者さんの居場所がなくなり家庭すら安住の場所ではなくなります。長期間休職している方が、それで焦って無理に復職したり、病院のデイケアが唯一の居場所になったりします。数年間寝室で寝たことがなく、毎日リビングのソファで寝ているという方もいます。それで帰宅恐怖症・帰宅したくない症候群(このような医者の自分勝手な診断名に対しては賛成できないのですが)になったりします。
長期休職を前提とすると、このような家族間の二次的な問題も大きくなってしまいます。それでうつ病治療は休養だけでなく、早期発見、早期治療、早期リハビリ、早期復職が必要と思います。 うつ病は休養第一、休めば治る、長期間休めば再発しない、などと考えている医者もまだまだ多いのですが現実はそうではありません。二年以上休職しても、治癒・再発防止を約束するものではありません。慢性疾患として上手に付き合うことが大切と考えます(もちろん短期間で治癒する場合も少なくありせんが)。
当院には、うつ病患者さんに対するカウンセリングが経験豊富で、その家族に対する心理的サポートも十分に対応できるカウンセラーがいますので是非相談してください。「メンタルヘルスマネジメント」の資格も持っています。この資格は「職場としてどのようにメンタルヘルスに取り組むべきか」「労働安全衛生法や休職者の復職支援」「セルフケア」等のテーマを取り扱う資格です。