本日の新聞報道で、日本人のある小児発達社会学の研究者とアメリカのハーバード大学との共同研究で、長期間に渡り体罰を受けた人は感情や意欲の働きに関連する脳の部分が萎縮するとの報道を見ました。それに対する某大学教授のコメントとして虐待の早期発見に役立つとのことでした、うつ病との関係もあるそうです。
毎日子供から大人、老人まで診療している医者として逆に疑問を持ちました。その学術論文は読んでいませんし、読む予定も無いのですが長年の経験から信じられません。それを発表した学者は子供の虐待に熱心に取り組んでおられる方で、子供の虐待防止、虐待児の心のケアに熱心だと推測します。しかし、体罰で脳が縮むと言われると反論したくなります。もちろん当方酔っ払いの一町医者ですからこちらの主張も怪しいところですが。
脳が萎縮すると言えば、アルツハイマー型痴呆を思い浮かべます。様々治療法があると言われていますが、現実には進行防止に役立つ程度と考えます。脳が萎縮するとは器質的な変化(脳の大きなダメージ)ということであり、実際は元通りには回復しません。つまり、虐待を受けた人は一生治らない、悩み続けることを意味します。これでは研究者の想いとは逆のメッセージを発することになります。
日常の診療現場では被虐待児だけでなく、発達障害、人格障害の患者さんに出会うことも少なくありません。これらは密接に関係するだけでなく、本質的には同じものと考えます。MRIの検査で判別可能とはとても考えられません。
MRIの検査で判別できるような器質的問題ではなく、脳細胞の神経回路の内容、神経細胞間のつながりの問題です。このブログで最初から主張していることです。この新聞報道で心配することは、子育て真最中の若い母親達がますます不安となり、育児書とにらめっこの状態になることです。育児、子育ては医学・心理学的な問題というよりも、常識的なことではないでしょうか。