本日の全国紙第1面に厚生労働省の方針で2008年度からジェネリック医薬品(後発医薬品)を標準として、新薬(今まで服薬していた薬)を使用する時はこれまでとは逆に、その使用理由を処方箋に説明記入を医師に義務付けるというものでした。当院でもそうした時代の流れに逆らうことなくジェネリック医薬品の使用を積極的に進めていますが、やはり役所の思惑通りには現実はいかないと実感しています。ジェネリック医薬品の使用を欧米並みにすると年間1兆円の医療費が削減できるとの事ですが、それでは全体としては患者さんにとっては1パーセント程度の節約に過ぎません。テレビの有名タレントを使った広告は少し誇大広告ではないでしょうか。
みなさん考えてみてください、長年飲み慣れた薬が別の名称に変わり一見別の薬に見える物を服薬する不安感に対してその程度の窓口負担減少で納得できますか、納得できない方も多いかと思います。当院でも結局本来の薬とジェネリック医薬品を両方在庫することになりました。在庫品目数の多い調剤薬局では相当なコスト増大となり、なるべく使用したくないのは経営感覚が多少でもあれば理解できます。しかも、ジェネリック医薬品は多数の会社が製造しており、それぞれ、名称、価格が異なります、供給も不安定な場合があり、ジェネリック医薬品が別のジェネリック医薬品に変わる可能性も想定しなくてはいけません。
新薬が高過ぎるというのも実感しています、新薬を日本国内で発売するためにはその薬が諸外国では普通に使用されている薬でも日本国内では再度「治験」という製薬会社、医療機関、治験担当医師にとっても負担の大きな人体実験をしなければなりません。当然大きなコストアップとなります。厚生労働省の机上の空論により、10年ぐらい前に治験制度が担当者にとって負担が重くなるように改定され(改定前に10回ぐらい治験を経験していたのですが、改定説明会に出席して臨床の仕事とは両立できないとあきらめました。役所のいつものパターンですが民間人に対して書類を書け書けという姿勢の結果です。)、それにより日本国内の製薬会社による新薬の開発が停滞し、海外の巨大製薬メーカーに新薬開発が独占されているのが現状かと思います。精神薬においても10年ぐらい世界水準から遅れているというのが実情です、これは患者さんにとっては大きな損失と考えます。その反面役所は必要なチェックは不十分で全国で薬害訴訟が起きています、やっていることがチグハグですね。
新薬承認の手続きを簡略化し、新薬そのものの薬価を引き下げるべきではないでしょうか。後発医薬品を使用しても思ったほど患者さんの窓口負担は減少しないことを役所が責任を持って説明すべきです。