日本の名医・良い病院を特集した本はよく見かけますが、実はその逆で「病院による患者選び」が精神科領域では珍しくありません。患者さんが医者や病院を選んでいるのではなく病院が患者を選り好みしているのです。
しかし、これは仕方ないと言うか必要な場合もあります。精神科のクリニックでは病院のようにスタッフはいませんし、設備もないし重症患者には対応できません。本人に受診の意思がなく、興奮状態になったりしたらお手上げ状態です。受診しやすいからと言って、家族が受診を嫌がる本人を無理矢理クリニックに連れてきたりすると、患者、家族、医療機関にとってもマイナスです。それをきっかけにますます受診を拒否するようになります。内科や外科で例えて言うとガンの患者さんを診療所だけでは対応できないのと同じような理屈です。
症状が重症な場合や、本人が受診を拒否するような場合は、精神科病院に連絡して事前に家族の方などが相談する事をおすすめします。各病院でも精神保健相談として対応しています。私が今でも非常勤医として勤務している荒尾保養院など、誠実で地道な精神医療を実践している精神科病院は地域精神医療を背負う覚悟がありますから安心して相談してください。医師以外のPSW(精神科ケースワーカー)や看護師、作業療法士、臨床心理士など様々なスタッフがいます。
しかし、精神科病院の中には軽症で入院する必要がない患者さんに「休め、休め、入院、入院」とセールストークをくり返す病院もありますので注意してください。そういう病院にかぎって症状が重たい方、希死念慮(自殺願望)がある方、興奮状態の方、家族に余裕のない方などは診療拒否します。ここで問題視するような病院は宣伝上手ですから、日本の良い病院のリストにのってたり、マスコミ露出度が高かったりしますのでますます要注意です。入院しなくても十分治療できたのに、自分のところの独自の治療によって治ったなどと言うわけです。個室の差額ベットの費用も相当かかりますから、患者さんも負担の面など覚悟が必要です。どうも公務員の方がターゲットとして狙われているようです、十分注意してください。